研究概要 |
今回の研究で、金粒子(サイズが1nm〜20nm)に結合したアビジン蛋白質は、金粒子サイズが5nm以上で、ある形状にdry upした時に、数十アトモル(amol;10^<-18>モル)レベルでも高感度にATR-FTIR法で測定できることを確認できた。また、測定対象が生体試料中の蛋白質などの場合、それらを金薄膜に結合させ、ビオチンをつけたそれらに相補的なもの(抗体など)を結合させた上で、そのビオチンと結合できる金粒子結合アビジンを結合させて、その金薄膜に張り付いているであろう金粒子結合アビジンをATR-FTIRのダイヤモンドプローブに密着させて計測する方法を開発した。このことによって、一分子単層膜であっても特定蛋白質だけの赤外スペクトルを観測することが可能になった。さらに、昨年度から今年度にかけて、血清中のある糖蛋白質の濃度変化と、統合失調症の病態との関係を調べ、有意な相関があることを第8回世界生物精神医学会議(Austria,2005)で報告した。この場合、疾患マーカー分子としての、ポリシアル酸(糖鎖)の付いた蛋白質(NCAM)が血清中でどのように変動するかを調べたが、微小な金薄膜に固定した抗NCAM抗体に結合した血清中のNCAM分子そのものの赤外スペクトルを分析することで、NCAMに付いている糖鎖(ポリシアル酸など)のサイズなどの性質の変化も調べることができ、日本神経化学会で報告した。また、金粒子を還元的環境下で加熱すると金コロイドの凝集が起こり、島状の金粒子が金膜の上に形成される事が確認され、また赤外吸収の増強効果が出ることを確認した。さらに、マイクロ波発信装置を更新し数dBの出力で金薄膜に固定した抗体とそれに結合した抗原蛋白のOH基の赤外吸収が増大することを確認した。今後は、この簡便さを生かすために、アレイ状に並べて対象分子を一挙に計測する方法を開発していきたい。
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