Glial scarは中枢神経損傷時にグリア細胞が活性化、増殖、損傷部位に遊走する事によって形成される。Glial scarは中枢神経軸索の再生・伸長を妨害することから、中枢神経損傷時にグリア細胞の活性化を制御できれば中枢神経軸索の再生が可能になると考えられる。本研究は細胞の分化・増殖の多くは、サイトカインが細胞表面上のレセプターおよびヘパラン硫酸プロテオグリカン糖鎖との3者複合体を形成する事から開始する事に着目し、分子設計プロテオグリカン糖鎖によるグリア細胞の制御を目指している。本年度の成果は次の通りである。 (1)活性型グリア細胞のin vitroでの誘導条件を確立した。ラット新生児脳よりグリア細胞を調整し、FGF-2を加え、グリア細胞の活性化を誘導した。グリア細胞は活性化するとその形状が変わることから、蛍光標識GFAP抗体を用いてグリア細胞を染色し、細胞の面積を測定することにより活性化あ程度を測定できることを明らかにした。 (2)各種分子設計プロテオグリカン糖鎖の調製を行った。ヘパリンの2-O位、6-O位、2-N位に結合している硫酸基を位置選択的に脱離した。得られた位置選択的脱硫酸ヘパリンの構造はC^<13>-NMRによって確認した。さらに、6-O脱硫酸化ヘパリンについては断片化し、6-O脱硫酸化ヘパリンのオリゴ糖2糖から16糖を得た。これにより、分子設計プロテオグリカン糖鎖によるグリア細胞活性化の制御実験を行う準備が整った。 (3)会子設計ヘパリンによるグリア細胞活性化制御の評価をin vitroで行った。脱硫酸化していないNativeヘパリンのオリゴ糖とFGF-2を培養グリア細胞に添加し、グリア細胞の活性化を検討した。その結果、6糖が強くグリア細胞の活性化を抑制した。また、2-O位、6-O位、2-N位いずれの硫酸基を脱離したヘパリンでもグリア細胞の活性化は阻害されたが、その程度は6-O位脱硫酸化ヘパリンが最も強かった。また、6-O位脱硫酸化ヘパリンのオリゴ糖を用いて検討した結果、6糖はグリア細胞の活性化を強く阻害した。
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