研究概要 |
日本各地から採集した車軸藻株の祖培養株から単藻培養株を得る為に、様々な培養条件下で培養し有性生殖器官を結実させ、成熟した卵胞子を得た。これら卵胞子を70%エタノールで洗浄、暗処理の後、オートクレーブした土壌二相培地に接種し、通常の光培養条件下においた。その結果、レッドデータブック(植物II,2000)で絶滅危惧I類となっているNitella flexilisとNitella mirabilisにおいて卵胞子の発芽が誘導され、その結果、両種において単藻培養株が確立した。また、香川県のすでに車軸藻類が絶滅したと思われる湖底の泥等を採集し休眠状態と考えられる材料を得て、実験室で培養して絶滅種を再生させるという方法も平行して実施したが、発芽した車軸藻類は得られなかった。 一方、これまでのNitella属の種レベルの系統関係はrbcL遺伝子のみを用いた一遺伝子の系統に依存しており、基部の系統関係において解析結果が不十分であった。そこで,より信頼度の高い分子系統樹を構築しそれらの不明瞭な部分を改善するために,rbcL遺伝子、(1182塩基対)に加え更にatpB遺伝子(1020塩基対)の塩基配列を決定し、両遺伝子を結合した合計2202塩基対を用いた分子系統解析をNitella属18種30株で実施した。その結果、本属内部の詳細な系統関係が解析され、これまでの栄養形態に基づく種と節の分類基準(Wood 1965)が系統を反映しておらず、卵胞子の形態がより系統を反映していることが明らかとなった(Sakayama et al. 2004,Phycologia)。
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