研究課題
日本各地から車軸藻類を採集し、特に汎存種シャジクモ(Chara braunii)の粗培養株を確立した。車軸藻類の単藻または無菌培養株を確立する為にシャジクモの成熟した卵胞子を集め低温で保存した後常温培養したところ水田産のものに関して発芽に成功した。また、日本各地の多様な水環境に生育するシャジクモの遺伝的多様性を明らかにするために、日本各地の様々な生育環境より採集された藻体を用い、葉緑体DNAハプロタイプ(rbcL及びatpB-rbcLのIGS)による系統解析および過去に種以下分類群の識別形質として扱われた形態形質の数量的計測を実施してきた。その結果、種以下分類群の識別形質では識別できない生育環境(水田等の浅水環境と湖沼等の深水環境)を反映した2大グループ(Group A, B)の存在が明らかになった。従って、レッドデータブックで絶滅危惧I類に分類されている本種は浅水環境産と深水環境産のものにそれぞれ着目して多様性保全の研究を実施するべきであると思われる。また、核コードのhsp90遺伝子のプライマーを単藻培養株を用いて開発し、シャジクモの83サンプルについて系統解析を実施した。その結果、核DNA解析で検出されたハプロタイプは、葉緑体DNAで解析された系統関係とは基本的に異なった。すなわち核DNAのハプロタイプは、葉緑体DNAにおけるGroup Aのサンプルのみで構成されるハプロタイプとGroupBのみで構成されるハプロタイプの他に、Group AとBの両方を含むハプロタイプに分類された。このことから生育環境の異なるGroup A、B間で父性の遺伝子交流が行われている可能性が推測され、浅水環境産と深水環境産の遺伝的多様性の保全のためには両者の自然界での保全が重要であると推測された。
すべて 2006 2005
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Phycologia 45・4(印刷中)
Algal Culture Collections and Environment(Tokai University Press, Hadano-shi, Kanagawa.)
ページ: 217-236