研究概要 |
この研究の目的はコレラやデング熱など,熱帯地方の伝染性疾患の発生と,気象学的,気候学的条件の関係を調べることである.これまで,バングラデシュにおいてサイクロンや洪水などの気象災害の発生に関する研究を行う過程で,バングラデシュ気象局やバングラデシュ水資源開発局などで収集し,約半世紀にわたる気象資料のデータベースを完成させた.一方,バングラデシュ国際下痢性疾患研究センター(ICDDR,B)では,伝染性疾患の患者に対してサンプル調査を行い,患者数についての1日単位の統計資料を数十年間にわたって蓄積してきた.コレラの資料を基本にして,気象要素と伝染性疾患の流行の定量的な関係について調べた.とくに,コレラや赤痢などの下痢性疾患について,バングラデシュにおけるモンスーン(雨期)の開始時期や終了時期との関係や,雨量,気温,湿度,河川や氾濫湖の水位などの気象水文資料の季節内変動との関係について,伝染性疾患の発生の資料を比較検討し,両者の関係を定量的に評価する準備をした.これまでは,気象衛星などからの気温や海面温度,海面高度などのリモートセンシングを利用した資料と伝染性疾患の患者数との比較を行ってきたが,この研究では,人間生活により身近な環境因子である地上気象資料を基本において,解析を進めることにした. さらには,ダッカの国際下痢疾患研究センター本部建物の屋上に自動気象観測装置を設置し,風,気温,湿度,日射量,降水量を1分間隔で観測できるようにし,より詳しい気象資料の収集ができるようにした.局所的な気象現象と伝染性疾患との間の関係についての定量的な調査に着手した.この気象資料は,ICDDR,BのLANにつなぐことによって,日本でも監視ができるようになった.
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