本申請研究は該当分野ではいまだ先行研究にめぐまれていないのが現状である。しかしまさにそれゆえに本申請研究は現在急務とされる新しい視覚的思考の枠組みと提立し、テレビゲームに代表されるインタラクティブ視覚装置をめぐる隣接人文社会諸科学(映像学、社会学、文学、心理学、教育学)の学術的議論の基盤となる方法論的視座を提供するものとなる。それは電子立国を標榜するあまたの国家戦略が基軸にすえるテクノロジー万能主義のなかで看過されてきた真に人間学的な問題を提起するものとなる。テレビゲームを主たる産業としつつある韓国、日本、アメリカの三国において過去5年ほどにテレビゲームについて様々な国際シンポジウムが開催されてきたが、それらもまた残念ながら技術論と文化論に終始し、より緻密な芸術学的議論は皆無といってもさしつかえない。平成15年度の膨大な調査を引き続き実施するのが平成16年度の主たる作業となったが、さらに本研究の方法論的視座の洗練化をはかるため、各種メディア学者、美術史学者、映画学者、美学者の最新の成果を検討する作業も平行しておこなわれた(加藤/田代共同担当)。暫定的成果を仮説とその検証というかたちで口頭発表用論文にまとめ、各種研究会にて発表し、斯界の専門家と意見交換をおこない本研究の精度をより高めた(加藤/田代共同担当)。
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