本年度は、入手済みの古筆切資料の調査データをコンピュータのデータベースに入力することに主眼を置いた。第一に、既入力データの確認チェックを進めた。極札の記載項目の収録状況をチェックし、料紙の寸法についても、界と罫についての記載項目を補うなど、データの内容の充実に努めた。第二に、既刊書目からの採録データをデータベース本体に接続した。主な書目は、『過眼墨宝撰集』第1巻から第10巻、『書道全集』(平凡社版)第13巻から第18巻、久曽神昇氏旧蔵古筆切の写真複製であるところの『私撰集残簡集成』・『物語古筆断簡集成』・『源氏物語断簡集成』・『和漢朗詠集切集成』等である。第三には、未刊古筆手鑑に収録される古筆切をデータ化し、データベースに取り込む作業を行った。主な採録対象となった古筆手鑑は、仁和寺所蔵古筆手鑑、琴平神社所蔵無銘古筆手鑑、同神社蔵古筆手鑑「閑雅集」、東山御文庫所蔵古筆切、個人所蔵古筆手鑑「筆林翠露」、某家所蔵古筆切コレクションなどであるが、すべてを採録するに及ばなかった。ここまでの作業の内、当初計画した事柄と大きく異なることとなった事に、古筆切の画像をデータベースとリンクさせるという目論見である。これは、主に原本所有者の所有権及び著作権との関係でデータベースから不特定の人間が取り出せる形にするわけにはゆかないという問題があることによる。このため、画像データは一部作成を試みたが、公開を前提とするデータベースとは切り離し、別に扱うこととした。最終的に、データベースの一部を試行版として冊子を作成した。
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