研究概要 |
本年度の研究実施計画として,年度開始時点であげたのは以下のとおり。すなわち,1)貴族屋敷の全体像をさらに明確にするため,モスクワ近郊を中心とするウサーヂヴァ・ネットワークを形成する代表的な場所の調査を行なう(例,アルハンゲリスコエ,クスコヴォ,ガガーリノ,など)。あわせてウサーヂヴァ博物館(モスクワ),「ウサーヂヴァ研究協会」を訪問し,最新の研究状況に関する情報を得る。2)アンドレイ・ボロトフの生家跡の博物館があるトウーラ県のドヴォリャニノヴォを訪問し,かれの生涯と仕事に関する基本的情報の確認をおこなう。これと対応する形で,3)ボロトフの回想記の全体像を把握し,上記した目的に沿う方向で記述する際の基本的軸を明確なものとしていく。また,以上の作業のまとめとして,4)ウサーヂヴァ研究に関する基本的文献,ボロトフ研究に関する基本的文献についてビブリオグラフィを作成する,という4点だった。この中で,1)に関しては,2004年7月から9月にかけてのロシア研修でモスクワ近郊の多数のウサーヂヴァの調査をほぼ計画どおり実施した。モスクワの歴史博物館支所にあたるクジミンキのウサーヂヴァ博物館で多くの情報を入手したことをはじめ,ガイドブックや書籍情報ではまったく不明な部分と現在のウサーヂヴァの保存・利用状態がかなり判明したことなど多くの新たな知見が得られたことは特筆できる。3)の「回想記」読解に関してはかなりの作業をおこない,ボロトフの百科全書的世界のいくつかの軸を抽出した。すなわち,18世紀ウサーヂヴァ文化を代表するボロトフの世界が,庭園,絵画,建築,都市計画,演劇,回想,農業経済,植物・農学,文学,哲学・思想などの諸相から成り立つことがあらためて確認された。4)については作業中で,これは平成17年度に継続される。
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