本研究の第一の目的である、スコットランド問題に関する第一次資料を収集することは、海外出張及び国内の図書館に出張することでかなりの成果を得ることができた。Daniel Defoeという小説起源論に関わる作家の本質を、17世紀の作家であるAphra Behnと比較考量することによって、スコットランド問題と小説起源論に関する論文、「亡命者たちとバラバラ死体-『オルノーコ』から『ロビンソン・クルーソー』へ」を執筆し、共著『病いと身体の英米文学』の第一章として公開することが決まっている(2004年5月出版予定)。 第二の目的であるDaniel DefoeからTobias Smolettへの系譜を辿る研究は、平成15年発表の大阪大学博士(文学)学位授与論文『詐術としてのフィクション-デフォーとスモレット』以来、研究を続行中である。第二の目的及び第三のWalter Scottに関する研究目的の研究実績として、18世紀イギリス文学・文化研究会第二回例会(2003年11月22日開催、於・専修大学)での研究発表「イギリス小説起源論におけるスコットランド問題-反乱のスコットランド」を特筆することができる。本研究発表は、本研究課題の平成15年度研究の成果の総決算であった。 スコットランド問題を現代スコットランドの小説家において研究した成果が、英文学研究の代表的雑誌である『英語青年』の2004年4月号(第150巻第1号)掲載予定(2004年3月9日発売)の論文、「「トレインスポッティング」スコットランド」である。これは現代イギリスを代表する小説家Irvine Welshの小説Trainspottingを同題の映画と比較してスコットランド問題を論じたものであり、現代のスコットランド問題からイギリス小説起源論に光を当てたものである。 以上の通り、初年度の研究実績としては満足のいく成果を得られた。
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