今年度は、まず、これまでの現地調査で記録したグイの韻文と歌の記録(フィールドノートおよび録音)の整理分類を行った。 また、それと同時に研究協力者の高田明氏から、グイのマザリーズのあらわれる場面の録画資料を提供してもらい、高田氏によるマザリーズ談話のスクリプトを参照しながら、映像と音声の精密な観察を、同氏とともに行った。その結果、マザリーズには、(1)グイの歌のうち、「音階的旋律のない歌」がもつプロソディックな特徴に非常に類似する特徴を有することと、(2)グイの韻文がもつ卓立によるリズムと同種類のリズムを有することとが認められた。そして、とくに(2)の発見は、こんどはグイの韻文の音韻的分析自体をより発展させるのに役立つだろうという見通しをもつことができた。この見通しのもとに、グイの韻文のうち「ハノ」と呼ばれるジャンルのテキストを、あらたな分析の枠組みを整備して考察し、その結果の一部分を、「"詩化"する動物への呼びかけ」(裏面の研究発表欄を参照)として刊行した。
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