平成15年度には、まず諸外国手話の資料をもう少し多く集めることと、データベース構築を少しずつ始めることを並行して行った。資料としては、モンゴル手話、中国手話、パレスチナ手話の辞書や、フランス手話、ロシア手話などのビデオなどが手に入った。特にパレスチナ手話の辞書は、政治的に不安定なパレスチナにおいて、パレスチナ赤三日月社(=赤十字社)によって発行されたもので、入手までに約1年の長い時間と非常な困難を要した。しかしながら、この手話は、ドイツ手話、ひいてはヨーロッパの諸手話の流れを汲む、イスラエル手話とはまったく系統の異なる、レバント地方(シリア、ヨルダン、レバノン、イスラエル、パレスチナを含む)土着の、アラブ人ろう者の用いる手話であり、これは日本手話とも、欧米の手話とも系統が違うことがはっきりしているので、諸手話言語の語彙が、どのような領域において、系統関係を超えて似ることがあるのかを知るための、一つの基準として用いることができると思われる。なお、データベース構築に関しては、まず基本100語を選び、ハンブルク表記法と、ストーキー表記法を用いて、既存の手話言語資料からデータベース化することを始めている。
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