文部科学省の「英語の使える日本人」など、「学校」における英語教育への期待は依然として高く、少年の英語学習者を対象とした研究も盛んに行われてきた。一方で「学校」を卒業した後、英語学習を再開する成人も数多く存在するなかで、成人英語学習者に対しての研究は少なく、公的な支援はほとんど行われていないのが現状である。そのような状況のなかで、成人英語学習者の特徴を考慮に入れ、効率的かつ効果的に英語学習を行えるような支援プログラムを構築する必要があるのではないか。 本年度(平成15年度)の研究目的は、日本における成人英語学習者への支援プログラムの構築のために、成人英語学習者(本研究では20歳以上の有職者)についての基礎的データを収集することであった。そのために、(1)成人英語学習者をとりまく社会的環境、(2)成人英語学習者の実態、の2点に焦点をあてリサーチを行った。(1)については雇用者が被雇用者に対して、月給・昇進などへ一定のTOEICスコアを要求するなど、高い英語適用力を期待する割合が高くなっていることがわかった。また、被雇用者も、雇用形態・職業意識・ライフスタイルの変化などに敏感に反応し、英語を重要なスキルと考える傾向が強い。(2)に関しては、成人英語学習者のケーススタディを行い、英語学習歴を評細に分析し、成人が英語学習を再開あるいは継続する要因を考察した。英語学習を再開する要因としては現在志向的(現在の業務上の必要性)、将来志向的(キャリアアップ、転職、定年退職後)、知的趣味、刺激志向的なものがあると分類できた。成人の学習再開、継続が3つの要因のひとつに起因していると言うよりも、複数の要因が関係していると考えることができた。どの要因が成人の英語学習再開や継続により影響力をもたらすかは、今後の課題としたい。
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