本研究の目的は、高速ブラウジングソフトを用いて、1)これまで写真撮影等に困難をきたしていた大型絵図の大容量デジタル画像データを作成し、「絵図」という貴重資料の半恒久的な保存をはかるだけでなく、2)得られた絵図画像データを各種の画像解析ソフトやGIS (地理情報システム)ソフトを用いて各種データとの結合をはかり、新たな絵図解析の方法を確立することにある。また、3)高速ネットを活用してデータの公開・提供を行うことで、絵図研究をさらに促進することにある。 今回、徳島大学附属図書館が平成10〜11年度文部省科学研究費研究成果公開促進費(データベース)を受けて作成した大容量絵図画像データの中から、阿波国絵図・伊能図(南海)の2点について、昨年新たに開発された高速インターネット・ビューイング・システム(MADO)を用いて附属図書館HP (http://www.lib.tokushima-u.ac.jp/~mado/)上で公開した。これについては、平井が雑誌『地理』49-1において紹介するとともに、同論文では高精細絵図デジタル画像の有用性について解説した。MADOは、ビューワやプラグインを使わずに、パソコン上で配信画像を直接拡大・縮小して閲覧することのできる画期的なシステムで、各方面から好評を得ている。なお、論文「国絵図にみる阿波五街道の成立」では、「阿波国絵図」の高精細画像データとGISソフトを用いて近世阿波五街道のデジタル地図を作成した。 さらに、徳島県上勝町教育委員会に所蔵されている文化10年(1813)作成の実測分間村絵図3点について高精細デジタル画像を作成し、うち2点についてはMADOシステムを用いてインターネット上で情報提供を行っている(http://dmuseum.ias.tokushima-u.ac.jp/%7Egakujts/switch.html)。また、これらの大容量絵図画像データをERDAS Imagineで幾何補正し、GISソフト(ArcGIS8.3)上で航空写真画像データ(1976・2000年)と重ね合わせ、視覚的に変遷が判別しやすい景観変遷3D画像データを作成した。これらの成果については、平成16年度の第47回歴史地理学会大会で発表の予定である。
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