本年は、研究計画書記載の通り、平成14年11月から平成15年3月までイラン・イスラム共和国において実施した調査や収集した資料の分析を実施し、既存文献の渉猟と整理を行って平成17年度に予定する現地調査の準備を進めている。 (1)調査の分析については、加藤雅信名古屋大学教授・藤本亮活水女子大学助教授が中心となって実施してきたいわゆる「契約意識」に関する国際調査の一貫であり、私は、同調査のペルシャ語版を作成し、イラン・イスラム共和国の4つの大学の法学部ならびに経営学部で実施して800サンプル以上の回答を得た。こうした方法による調査は、法学の分野に限らず、イスラム圏に関する研究としてはおそらく我が国初のものであり、その成果は近時公表の予定としている。 (2)現地で収集した資料や得られた情報は多岐にわたるが、司法統計に始まり、裁判所について説明した書物、高等教育局から提供されたイラン国内の法学部の学生数の一覧、インタビューによって得られた法学教育システムの概要、教育現場でのインタビュー調査による司法制度の概要、私が滞在したアラメタバタバイー大学の法学教育の在り方や、実際の教育場面を撮影したビデオなどが含まれる。これらは特に平成17年度に予定する現地調査の基礎資料となる。 (3)以上のほか、これまでの文献を渉猟し、法制度についての具体的な記述をさがす作業や、これまでの研究の成果を窃取しつつ、イスラム世界に対するイスラム研究者の視線や法学研究者の姿勢というものを批判的に検討した。
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