本研究は、イスラム社会における国家法に焦点を当て、イラン・イスラム共和国を素材にしながら、司法制度のうち、特に法律家の養成制度やその社会的役割を明らかにしようとするものであり、現代のイスラム社会を対象とする点では我が国のみならず国際的にも研究蓄積のない課題に取り組んだものである。 イランの法制度を語ることは直接に政治的状況の影響を受けるため、現地でのフィールドリサーチについては公表に適さないものがあるが、法学部と経済学部の学生に対する契約意識の調査の実施と分析を通じて法学教育の基本的な形態の把握を終えることができ、また当該調査の結果の一部を研究成果として公表するとともに、当該調査の結果をイランの研究者、学生にフィードバックしてその結果解釈についてのイラン研究者のコメントを得ることができた。また、日本国憲法における権力分立の構造とその実態を紹介し、社会構造改革について権力分立構造の変更という視点から分析したペルシア語(Farsi)の論文を公表した。これは、イランでの日本経済の動向への関心に応えたものであり、要請に応じイラン社会の事情に沿って記述されたものである。
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