16年度においては、前年度で提起した「辺境東アジア」という概念を固め、台湾、香港、沖縄のそれぞれの国民統合・アイデンティティ問題の特徴を探ってきた。 具体的に、まず、沖縄、台湾、香港、沖縄、そしてマカオも加え、民族・国家をめぐる住民のアイデンティティの国際アンケート調査を行った。文化的帰属意識、すなわちエスニック・アイデンティティの調査結果から、地元意識の強い順は、台湾・沖縄・香港・マカオとなり、また政治的・国家的帰属意識、すなわちナショナル・アイデンティティについては、地元の政治的自立を強く求める順は、台湾・香港・沖縄・マカオになっている。さらに後者を左右する最大な変数は、「自立能力」であることも調査から得られた。 次に、台湾、香港、沖縄のそれぞれの実証研究も展開した。その成果は、17年2月28日に出版された拙著にまとめられている。この本は、三地域の共通点を「帰属変更」・「祖国復帰」・「アイデンティティ」というキーワードに表現し、「辺境東アジア」地域のダイナミックなアイデンティティ・ポリティクスを考察している。今後も、この方向でさらに探求していきたい。
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