研究概要 |
地域通貨とは,人々が自主的に設計・運営し、特定地域・コミュニティ内でのみ流通する、利子がつかないお金である。それはまた、人々をつなぎ合わせ、互酬的・互助的なコミュニティを形成し、そこにおける共通の価値や関心を表現・伝達・共有するための媒体でもある。地域通貨は、貨幣としての<経済メディア>の側面と言葉に近い<社会・文化メディア>の側面を兼ね備えている。だからこそ、地域通貨は、「地域経済の振興・活性化」という「経済的」目的と、「地域コミュニティの保全・創造」という「社会的・文化的」目的を同時に達成することができるのだ。地域通貨はこれら2つの側面を統合したものだが、個々の地域通貨が両側面をどれだけを含むかは,システムのタイプや導入するコミュニティによって様々である。 地域通貨は,発行・流通方法の点から,紙幣方式・口座方式・手形方式に分類される。まず,それぞれの特性の違いを理解し,世界や日本の諸事例をよく研究し,関連する国内の法・規制等も十分認識しておくことが必要だ。近年,町や村の中だけで使える地域商品券を複数回流通させることにより,それを地域通貨に転用しようという動きも出てきた。また,ポイントカードや電子マネーの地域通貨への応用も見られる。 地域通貨の応用の一例として,北海道常呂郡留辺蘂町が発行し,複数回流通させることで地域通貨へ移行しようとしている地域商品券について現地調査を行った。商品券から地域通貨への転換には,商店街や住民の理解が不可欠であるが,地域通貨による地域経済振興のメカニズムが十分に理解されていない。今後は,役場におけるボーナスや公共事業に一部用いることで,流通圏を広げようとしている。また,デマレージを加味した減価通貨の導入も検討中である。
|