研究概要 |
2004年6月地域通貨国際シンポジウム「Local Currency in the 21^<st> Century」へ参加し,海外の地域通貨研究者および実践者と討論した。その後,イサカのイサカアワーとニューヨークのタイムダラーの運営状況を視察した。7月に進化主義的制度設計という観点から地域通貨を論じた論文を掲載した編著書を刊行し,7月に北海道自治研修センター,8月に計測自動制御学会(SICE)の主催「創発システム」シンポジウム,11月に北海道経済学会で地域通貨に関する講演を行った。 11月から北海道苫前町および同商工会が商店街スタンプと統合した複数回流通商品券を新たな地域通貨として発行する流通実験調査を行うことになったので,その現地調査と実証分析を行った。現地での住民ヒアリングを数回,リーダーによるグループディスカッションを2回,ランダムサンプリングによる住民へのアンケート調査を3回行い,町民の全般的意識と地域通貨への関心や理解,実際の利用状況や感想などを聞いた。それと同時に,券面裏に受取主体の氏名,期日,目的を記載してもらい,それに基づいて,地域通貨の流通ネットワークを描き,グラフ理論を応用してそのクリークや中心性などについてネットワーク解析を行った。これらの調査を通じて,同地域通貨の有効性(が経済活性化とコミュニティの活性化という二つの目的をどの程度達成したのか)を定性的・定量的に分析し,また,今後の地域通貨制度の制度設計や運営のあり方に対する提言を行った。 また,LETSにおけるマネーサプライにあたる全主体が持つ黒字の合計が増加する理由をランダムネットワークの場合について数理的に解析した。さらに,ネット上のLETSである「Q」のデータを利用して,それらの全主体の口座残高(黒字ないし赤字)の累積密度分布が指数1のベキ分布になることがわかった。
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