満足化原理にもとづく限定合理的意思決定の公理論的基礎づけについては、リスク下の意思決定、不確実性下の意思決定、あいまい状況下の意思決定、多属性評価の意思決定などの場合における比例尺度となる評価関数の公理的導出を行い、その性質、評価手法、推定手法などを明らかにすることを目的として理論的研究を行った。そのうち、リスク下の意思決定問題においては、確率分布(ギャンブル)を代替案とするとき、許容できるギャンブルは、その期待効用が(必ずしも線形ではない)ある非負の閾値を超えるものに限るという表現定理を示すことができた。この結果は国際的な数理心理学の学術誌であるJournal of Mathematical Psychologyに掲載された。この結果を複数の期待効用関数を必要とする一般化についての研究結果もまとめているところである。また、代替案の表現が異なるその他の(不確実性下と多属性評価)状況における『〜は許容できる』という単項関係の数量的表現についても公理的構造を明らかにした。リスク態度などの経済エージェントをモデル化する重要な概念についても、満足化原理の枠組みで捉えることについても研究を継続中である。応用については、期待効用最大化原理によるモデル化の限界が盛んに議論されているファイナンス理論において、満足化原理にもとづくファイナンス意思決定の基礎づけを試みる研究も継続中である。 上記の理論的研究以外にも行動ファイナンス分野における期待効用モデルの限界を議論している文献や、その解決のためのさまざまな試みについて広くサーベイを行い、文献、資料等のPDF化をしてデータベースの構築も行った。
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