中小企業の成長に影響を与える要因について、デイビッド・ストーリー教授の分析枠組みに沿った形で質問票を作成したアンケート調査を実施した。企業家/経営資源に関する要因に関しては、開業動機や経営者の教育水準が中小企業の雇用創出に影響を与えていることが明らかになった。企業に関する要因に関しては、業種によって雇用創出に差がみられ、サービス業は他の業種に比べて高い数値になっている。所有形態との関連についても、ファミリー・ビジネス型の雇用創出が極めて小さい一方、独立型企業の雇用創出は大きく、その重要性を伺うことができる。経営戦略に関する要因に関しては、従業員や経営者自身の訓練に対する経営者の積極的な姿勢と雇用創出との間にはかなり明確な傾向を見て取ることができる。経営者と親戚関係にない個人から出資を受けているのかどうかという点から外部株主の導入に対する姿勢を見ると、外部株主の導入に消極的な経営者が圧倒的に多いことがわかるが、雇用創出は外部株主導入に積極的な企業において大きくなっている。市場でのポジショニングと雇用創出との間にも明確な関連性を見て取ることができる。また、新規顧客・販売ルートの開拓や新製品・新サービスの開発を重視している企業の雇用創出が大きくなっていることも示された。経営スタッフの調達に関しては、設立時と現在の役員数の変化を見たところ、役員数を増加させた企業は役員1人の増加が雇用数全体の増加により大きな影響を持っていることがわかる。一方、顧客の集中度や市場における競争と雇用創出との関連性は明確ではない。情報とアドバイスの利用に関して、同業種、異業種、大学・研究機関とのネットワークの構築に対する経営者の姿勢と雇用創出との関連についても見たが、あまり明確な傾向は示されていない。輸出に関しても売上高のうち海外輸出の占める割合は極めて低く、ほとんどの企業が輸出をまったく行っていない企業である。
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