研究概要 |
小高(2001)では,戦略的意思決定において,ミドルは客観的なデータにもとづき判断し,トップは,客観的なデータを考慮に入れながらも,主観や直観も用いて判断を行っていた。このことから,戦略的意思決定において,ミドルは,より環境決定論的であり,トップは,主体的選択論をもとに判断しているという仮説が成り立つ。 この仮説を検証するための方法として,認知マップと呼ばれる手法を検討するために,認知マップに関する先行研究のレビューを行なった。その結果,代表的な認知マップは,大きく5つのカテゴリーに分けることができることがわかった。それは,1)注意を表すマップ,2)カテゴリーや認知的タクソノミーを表すマップ,3)推論や因果を表すマップ,4)議論や結論の構造を示すマップ,5)スキーマやフレームを特定するマップである。このうち,本研究に最も適している方法は,3)の推論や因果を示すマップであると考えられる。 次に,当研究に参考になりそうなコード化の例を探索する目的で,因果マップを用いた経営学の先行研究をレビューした。探索の結果,いくつかの有効なコード化の例が見出された。たとえば,環境,戦略,目標という大きく3つの要素から構成される構造である。こういったコードの構造は,経営学の研究における代表的なフレームに則っている。さらに,この3つを,細分化したものとしては,環境に関するものでは,マクロ環境として,経済,政治,法律、技術などに分けられる。また,環境としての業界では,市場の成長,競合や消費者,供給業者,流通業者などがある。戦略には,マーケティング,R&D,ファイナンス,生産,商品開発などがあり,目標には,売り上げや利益,価格やコストなどがあげられる。本研究における次のステップであるコード化では,これらのコード化の例を土台に,本研究の仮説の検証にふさわしいものを,探索する。
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