本研究は、コンピュータやネットワークの発達による社会のデジタル化の進展に対応して計算物語論ないしは計算文学理論を基盤とした広義の物語生成やハイパーテキスト小説の開発を通じてコンテンツ研究の新たな手法を検証し、その向こうにハイパーストーリーとでも言うべきデジタルメディア時代に対応したコンテンツの新しい可能性を模索して情報メディア論に新たな研究手法をもたらすことを目的とした。 平成17年度は、以下のような調査・検討を行った。 (1)研究の最終年度として、16年度に実施した(A)ハイパーテキスト小説及びその自動化に関する研究(研究代表者)及び(B)物語の高度な自動生成・表現方式の研究(研究分担者)の精緻化を図った。 (2)上記(A)と(B)の統合によるハイパーストーリーの研究(研究代表者・研究分担者)を実施した。 ・ハイパーストーリー:(A)と(B)で得られた知見に基づき、ハイパーテキストと物語生成とを統合し、新たな表現手法としての「ハイパーストーリー」のコンセプトを確立させて実例を示した。この実例から「フローティング・ハイパーテキスト」の概念を獲得し、テクストの分析と生成の双方に有効なモデルを提唱することができた。 ・紙媒体からハイパーストーリーへ至る進化モデルの構築:上記で獲得された概念を発展させるための指標として、既存メディア・表現手段との対比や歴史的考察を含めることにより、テクノロジーとしての可能性のみならず、その受容過程までを予測した。
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