入園式直後のビデオ観察を予定していたが、個人情報保護法の施行などの影響を受け、実施不可能となったため、昨年の観察を基に、保育士のための研修会を行った。また、さらに10月になってから、保育場面の観察を毎週1日、朝から夕方まで、6週間に渡って行った。その観察に基づき、クラスごとの研修会を行った。 本年度の目的は、これまでの調査結果を踏まえ、そこに保育場面の観察を加えて、保育士が自己理解を深めることを通して、成長できるような研修内容を検討することであった。そのための一つの切り口として、母子分離に対する意識を取り上げることを考えていたため、入園当初の関わりについて昨年同様観察を行う予定であったが、今年度は秋になってからの観察となった。しかし、子ども達が園に慣れてきた時期だからこそ起こりうる、母親と保育園との間のトラブルについて、保育士と園長が共に考え、理解を深めた上で、保護者との関わりを調整することが、ビデオ観察を用いた研修によって可能となった。そこでは、やはり、母子分離や母子の関係に対する、保育士のとらわれ、こだわりなどが影響していることが、研修を通して明らかになった。また、ビデオを用いて、子どもの行動や保育士自身との関わりを客観的に見ることは、苦しい作業であるが、自らの関わりのパタンを認識し、そこに影響している自分自身の子どもイメージや母子関係イメージを洞察することは、保育士の成長にとって意味のあることが示唆された。さらに、管理職とともに、ビデオを見て意見交換をすることが、双方のコミュニケーションの深まりにも寄与し、保育園という職場の活性化などにも影響があることが示唆された。この点に関しては、負の影響も考慮する必要があるものの、臨床心理士が子育ての現場である保育園で担える役割を検討する上でも貴重な資料となりうるだろう。
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