研究概要 |
出生直後NICU入院となり,高い発達リスク要因を抱えた児とその両親は,早期から支援を必要としており,我々はハイリスク児の親子教室」を開いて支援プログラムを実行してきた。しかしこの親と児への支援は出生後2年半から3年までの期間に限られており,その後の発達の実相や養育環境,適応状況については,重篤な障害が発生している事例を除くと資料が少なく,いかなる支援が必要であるかについても明らかにされていない。そこで本研究ではMCUをもつ兵庫県内の医療機関を平成3年以降に退院し、平成15年の時点で小学校または養護学校の小学部に在籍している児童を対象にし,検診時の医学的資料を整理することから始め,あわせて児の発達とそれに関する親の思いや社会的支援への要望について知るために,児の両親に対して郵送による質問紙調査を行った。調査内容は子どもの誕生から項在に至るまでを,(1)妊娠・出産から2,3歳までの時期(2)3,4歳から就学前までの時期(3)就学してから,現在に至るまでの時期に分けて,それぞれの時期に両親がどのような気持ちで児の発達を捉えてきたか,親の不安や罪障惑,レジリエンスはいかなるものであったか,児や両親にとって危敵的状況を生み出しかねない事象とは何かについて尋ね,加えて児の発達過程の中で関わりがあった保健・福祉・教育機関等への思いや要望についても記述してもらった。その結果,出生直後および退院直後後親たちは大きな不安を抱えており,この時期の親への心理的支援は医療機関が担うことになる場合が多いが,相談に応じる心理士等による厚いケアが必要とされていることが示された。また就学前に障害が告知された事例では両親は大きな心理的危機を経験していた。学童期では障害が発生していない事例では出生時のショックからの回復がみられた。次年度は面接資料の分析を実施し、心理士の支援のあり方を検討したい。
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