現代社会における夜型化の進行と生体リズムの乱れは、睡眠の不規則化と短縮化を招き、日中の眠気の要因ともなるばかりでなく、精神的健康を脅かし、新たなストレスの源泉ともなっている。そこで夜型化と生体リズムの乱れが特に顕著な大学生を対象として調査を行い、このような睡眠習慣を規定する要因を検討した。[方法]2005年11月に心理学の受講者231名(男性78名、女性153名、19.3±2.9才)に調査票を配布した。調査票は、(1)睡眠習慣調査、(2)朝型-夜型尺度、(3)アテネ不眠尺度、(4)睡眠価値観、(5)就床時刻影響度、(6)睡眠知識、(7)Locus of Control(LOC)尺度から構成されていた。(4)〜(6)は、本研究において新たに作成した。なお、個人が特定されることのないよう、分析データと回答用紙は、別々に管理した。[結果と考察]因子分析の結果、睡眠習慣調査から、睡眠位相・規則性・睡眠時間の3因子、睡眠価値観から睡眠優先度・睡眠規範・分割睡眠の3因子が抽出された。多重共変性を避けるため、基準変数を限定し、睡眠優先度・睡眠規範・就床時刻影響度・睡眠知識・LOCを説明変数、睡眠位相・規則性・睡眠時間を目的変数とする重回帰分析を行った。その結果、睡眠位相と睡眠時間は、ともに睡眠優先度が有意に寄与していた。すなわち、睡眠を優先するかどうかが、就床時刻と、睡眠時間の長さの規定因となっていた。しかし、不眠は、睡眠規範とLOCが有意に寄与しており、規範の高さと自己コントロール感の強さは、却って不眠を引き起こすリスクファクタであった。これらの結果から、睡眠習慣と睡眠衛生にとって睡眠価値観が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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