研究概要 |
1)本研究では,ヒトで好奇心との関連が報告されているドーパミンD4受容体遺伝子多型領域を鳥類で解析し,行動特性の遺伝的側面からの解明を目指している。そのため、ハト、ウズラ、コウライキジ、ウミウ、ホロホロチョウ、ハシブトガラス、カササギで血液または羽を採取したエキソン1と3,イントロン2の3カ所について,ヒト多型領域増幅用のプライマーを用いて,ウズラDNAの増幅を試みた。エキソン1領域で増幅に成功し,塩基配列の相同性を確認した。ウズラ配列に基づくプライマーを作成し,多様な鳥類種において塩基配列を解析した。 2)その結果、ヒトのエキソン1領域には,鳥類とは異なる12塩基の挿入・欠失が存在し、妄想性障害との関連が報告されている。鳥類の相同領域では,プロリンをコードするCAGの反復配列が存在していた。 3)ニワトリでは、反復数9回と8回のアレルが存在し、烏骨鶏は9回,ブラックミノルカは8回と品種差が見られた。横斑プリマスロック、ロードアイランドレッドでは品種内多型が見いだされ、8回のアレル頻度がそれぞれ0.738、0.663であった。ウズラ、コウライキジ、ウミウは反復数9回、ホロホロチョウ、ハシブトガラスは、それぞれ12回,4回の遺伝子を持っており、種内多型は見いだされなかった。 4)行動課題として連続獲得課題とWCST類似課題を開発し、脳損傷による課題遂行への効果を確認することができた。今後、さらに好奇心を的確に測定する行動課題を開発し、D4の選択的拮抗薬によって実際にその課題での成績が低下するかを検討する。 5)また、今後は,ニワトリで遺伝子型の異なる系統を作出し、行動の比較を行う予定である。さらに、鳥類の種によって反復数が異なるので、カケスとレース鳩での解析を行い、行動との対応を検討する。
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