本年度は、「介護等体験」の実態に関する調査研究を中心に行った。「介護等体験」の制度は、平成10年度から実施され5年を経過している。この制度は、小・中学校教員免許状取得者に必要な要件として、盲・聾・養護学校および社会福祉施設における介護等体験を義務付けているものである。しかし、制定後6年を経過した現在においても教育および福祉関係者の意識、またその運用実態についてさまざまな様相を呈している。そこで、本調査では、(1)学生を送り出す養成施設側(大学・短大)の介護等体験に対する取り組み状況について、(2)学生を受け入れる側(盲・聾・養護学校、社会福祉施設)の対応について実施した。 養成施設側の対応についてみると、各大学・短大の介護等体験についての取り組みは、それぞれ工夫をして対応しているが、実習先と学生の間で生じた問題への対処に苦慮している様子も伺える。事前・事後指導については、教育実習の事前・事後指導の中に組み込んで実施しているケース、教育演習の中に含んで指導しているケース、事務的にオリエンテーションだけを実施しているケースなどそれぞれ異なった対応をしており、大学・短大における介護等体験の位置づけが定着していないことがわかる。また、受け入れ側の対応についてみると、盲・聾・養護学校においては、将来の教員を育てるという意識で教育的指導を行っているところがほとんどであり、大学・短大との連携・協力体制をとっていくことの必要性を望んでいるところが多い。社会福祉施設の対応はさまざまで、介護等体験担当職員を置いて指導を徹底しているケース、介護等体験学生の受け入れには消極的なケース、体験内容について介護福祉士などの専門の実習と区別せずに実施しているケースなどさまざまで、受け入れ側の関係者の意識も必ずしも積極的対応になっていないことが伺われる。なお、本調査は平成16年度継続調査であるので、引き続き実施していく計画である。
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