構造主義、ポスト構造主義が学問の諸領域に浸透するなかで、近年、普遍的な「真理」に基づき直線的で一元的な体系をもつとされた知のイメージは、多元性、多義性、複雑性を有するネットワークあるいはウェブといった形にとって代えられてきている。こうした知をめぐるパラダイム転換が進行し、学校教育の前提となる知のあり方が大きく変化するなかで、既存の教科の枠内で構想されてきた学校知は、根本的な見直しを迫られているといえる。 本研究では、こうした知の再編に対応して、学校教育のカリキュラムをどのようにデザインし直していくかという基本問題を追究することを目的としている。その手がかりとして、アメリカ合衆国に焦点をあて、学問分野の学際化とそれに伴う大学の一般教育、及び、幼稚園から高校まで(K-12)の学校教育のカリキュラム改革にみられる知の編成原理の変容について解明を試みている。 本年度は、関連文献を収集し、文献研究をもとに、アメリカ合衆国の教育改革を「真正の評価」の視点から検討した。そこでは、テスト批判として展開する「真正の評価」の概念、その背景となる学習理論としての「パフォーマンス」「状況的学習」「専門的技能」「コンピテンシー」、あるいは、「真正の学力」としての「知識の生産」「探究された探究」「学校を超えた価値」について考察した。こうした分析を通して、これからの学校教育で求められるカリキュラムは、ばらばらの知識を記憶し再生する力ではなく、学際的で統合された知として現実の世界で生きる力に基づかなければならないことが示唆された。
|