本研究は、1980年から2000年までの20年間について、主として開発途上国の教育拡大の現状と、社会経済的要因との関係を明らかにしようとするものである。マイヤーらの制度論アプローチによれば、1950年から1970年代にかけては世界的に教育爆発が起きた時代であり、それは個々の国々の社会経済状況にかかわらず、世界文化(規範)として学校教育が普及した時代であった。 しかし、1990年のタイのジョムチェンで開催された「万人のための教育」会議及び2000年のダカール行動宣言において、2015年までの基礎教育の完全普及が世界的に合意され、基礎教育の普遍的価値が全世界に受け入れられたにもかかわらず(基礎教育の制度化)、一部の地域、特にサブサハラアフリカや南アジアでは、むしろ就学率の停滞や低下が顕著である。 そこで、本研究は、さまざまなデータソースを用いて基礎教育の普及状況と社会経済状況の関連を今一度検証し、マイヤーらの制度論に代わりうる新たな理論構築を試みるものである。 これまでの分析によれば、就学率の停滞をもたらす主な要因は、構造調整などによる経済的停滞と人口増加である。
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