1名のSMA児を対象にして、以下のような研究・教育実践が実施された。 1.対象児の動作の可能性と身体部位 対象児において意図的な反応が可能な身体部位を検討した結果、左右の指先に確認された。ただし、その動作も、指・手・上腕の微妙な位置に影響されることが分かった。その要因として、骨格・筋肉の成長が不十分で、毎回同じようにスイッチをセッティングしても、衣類などにより対象児の腕等の肢位が異なること、その肢位によりスイッチに対する対象児の「力」が違うことが推測された。今後は、筋電等の導出により、肢位と「力」との関係を検討する必要がある。 2.動作の客観的評価 対象児の動作は、わずかな外力により影響されるので、意図的動作の発現を客観的に評価する検討を行った。その結果、単一事例実験法のA-B-A法を用いて、単純な応答システムと複雑な応答システムにより比較したところ、明らかに複雑な応答システムを好む傾向を示し、動作が意図的に行われていることが確認された。これにより、Yes-No反応を基盤としたコミュニケーション形成が可能であると推測された。 3.発達段階を考慮した応答システム 意図的な動作をコミュニケーションの素材として活用するためには、対象児が環境の応答性を認識し、対象児自らが繰り返し環境に働きかける状況とそれへの動機づけを保障する必要がある。そこで、幼児である対象児の発達段階を考慮し、好みや季節イベントに配慮したおもちゃ形式の応答システムの開発を行った。
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