研究概要 |
本年度の研究成果は,2次元Calabi-Yau多様体であるK3曲面とそのモジュライに関するものが中心になった.M_<2d>を次数2d(p 〓2d)の偏極K3曲面のモジュライ・スタック,π:X→M_<2d>を偏極K3曲面の普遍族とする.V=π_*(Ω^2_<X/M_<2d>>)とおき,その第1Chern類をυ=c_1(V)とおく.また,t_2=c_2(Ω^1_<X/M_<2d>>)とおく.任意の0以上の整数lに対しπ_*(t^<l+1>_2)を有理係数のChow群の中で,υの式として表せばa_lυ^<2l>の形となるが,有理数a_lを具体的に決定した.また,M_<2d>の接束をΘとするとき,M_<2d>のGrothendieck群に於けるΘを,H^2_<dR>とVを用いて表示し,c_1(Θ)=-19υなることを示した.これらの事実および周辺の結果を論文にまとめ海外共同研究者G.van der Geerとの共同研究としてMoscow Math.J.に発表した.また,正標数における単有理曲面の研究の成果をK3曲面の場合を中心としてCreteにおける研究集会で発表した.Calabi-Yau多様体の場合には接束の第1Chern類が消える.そのことによって,Calabi-Yau多様体は素粒子論における超限理論で重要な役割を演ずるが、Higgs束も素粒子論において重要な役割を有している。Calabi-Yau多様体の接束のように第1Chern類が消えるようなHiggs束を考える.これらのベクトル束はSimpsonの結果から安定なものはn次元射影多様体Xの基本群π_1(X)の特殊線形群SL(r,C)への線形表現から得られることが導かれる.研究分担者宮岡洋一は,第1Chern類が消えるような安定Higgs束の興味深い例をいくつか構成した.
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