研究概要 |
重力場レンズ現象を記述する物理的意味や方程式はある程度整備されているが、正しい幾何学的枠組みはいまだに不確定であった。実際、従来の研究結果として、単レンズ(途中のレンズ天体が一個の場合)の場合には重力場レンズ現象の物理的モデルはアーノルドのラグランジュ特異点論の枠組みで記述されることが知られていたが、この枠組みでは、多重レンズ(途中のレンズ天体が複数個ある場合で、一般的状況では多くの場合はこうなっていると考えられる)の場合は記述できないことがわかった。そこで、当研究ではラグランジュ特異点論を含むシンプレクテイック関係の理論で記述すれば多重レンズ現象も含んだ形で枠組みが構成できるのではないかと考え、初年度としてはその理論的枠組みを構成することを主たる目的とした。その結果、シンプレクテイック関係の合成という概念を構成し、単純に複数個の天体が並んでいる場合には、この枠組みが多重重力場レンズ現象を記述するものであることがわかった。さらに、重力場レンズ現象において重要な概念として、焦線(倍率が無限大となり、そこを境として星の像の個数がかわる曲線)があるが、この枠組みにおいて、焦線の分類を行い、従来の枠組みでは得られない新しい形状の曲線が現れることを明らかにした。 一方、これらの枠組みはロバートソン・ウオーカー時空などでは正しい近似理論であるが一般の場合にはより厳密な枠組みが必要とされる。当研究では、現在「厳密普遍重力場レンズ方程式」と呼ばれるFritteli, Newmanの枠組みのシンプレクテイック幾何学化を推進中であり、それは、次年度の重要な目標の一つである。
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