北海道大学の西浦廉政教授の著書「非線形問題1」で取り上げられているパターン選択の問題について研究を行った。まず、いくつか定常パターンの中から特定のパターンが選択されるとき、不安定なパターンが選択されることはありえないということに注目し、パターンの安定性を調べる方法を考察した。本研究の共同研究者である東北大学の柳田英二教授との研究により、勾配・歪勾配をもつ散逸系における空間的に周期性をもつパターンの安定性を決定する公式が得られた。この結果は、応用範囲の広い非常に便利なものであることが認められている。これは、国際的な専門誌Physica D vol.175pp185-195(2003)に掲載された。 この結果をもとに、勾配・歪勾配系をもつ散逸系におけるチュトリングパターンの選択問題について、どのような周期をもつパターンが選択されやすいのかという問題を考察した。その結果は、京都大学数理解析研究所で開催された研究集会「反応拡散系におけるパターン形成と漸近的幾何構造の研究」(研究代表者、坂元国望、2003年10月15日から10月17日まで)で発表することができた。その発表内容は、京都大学数理解析研究所講究録に掲載される。この研究ではチューリング分岐点の近くで、いくつかの具体的な散逸系のモデル方程式を離散フーリエ変換を用いて解き、もっとも選択される可能性が高いパターンを統計的に調べた。その結果、勾配・歪勾配構造によって定義されるある種のエネルギーを最小にするパターンが、パターン選択問題で重要な役割を果たしていることが検証された。
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