本年度は、散逸系におけるパターン選択の問題を研究した。とくに、gradient/skew-gradient構造をもつ散逸系に現れる空間周期定常パターンの波数(空間周期)選択問題を取り扱った。ここで扱ったパターンはチューリングパターンとよばれ、生物の形態形成や化学反応などに見られる有名なパターンである。数学的には、反応拡散方程式系とよばれる偏微分方程式系に見られる分岐パターンとしてとらえることができる。本研究では、数学理論だけでなく、高速フーリエ変換を利用した数値実験により、選択される波数が必ずしも系のエネルギーを最小化する波数とは一致しないことを示した。この結果は、SIAM J.Appl.Math.Vol 65(2005)において発表することができた。また、研究分担者である大阪大学の小川知之助教授のグループの研究論文SIAM J.Appl.Dyn.Sys.(掲載決定)およびJapan J.Ind.Appl.Math.Vol.22(2005)(掲載決定)において報告されているConley indexの理論にもとづく方程式の解の数値的検証の方法、とくにSwift-Hohenberg方程式に現れる空間パターンの数値検証法による分類について研究を行った。この研究はさらに発展性のあるもので、一般的なgradient/skew-gradient構造をもつ散逸系に現れる空間周期定常パターンの波数選択問題にも有効であることが期待される。また、反応拡散方程式系における特異摂動問題に現れる遷移層解の構成方法、安定性解析、ダイナミクスを統一的に議論する理論的な枠組みを、龍谷大学の森田善久教授、九州大学の栄伸一郎教授と共同で研究し、その結果を応用数学合同研究集会報告集(2004年12月20日-22日、龍谷大学)で発表した。
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