研究概要 |
本研究では水素原子を終端したシリコン完全結晶表面をポーラスシリコンの理想モデルと見なして単純な平坦面から凸凹なポーラス面に至る試料について順次光電気化学的特性を解析し、水素発生などの光触媒効果を原子的素過程して解明することを目的とした。 先ず主要設備として光電気化学セルを設計、制作した。これを用いて電解液中の電気化学測定とラマン散乱分光が同時に行えるその場観察可能な装置を組み上げた。 本装置を用いて、(100),(110),(111)面を持つシリコン電極について塩酸を電解液として光照射下での電気化学的測定を行った。初年度は平坦面についての基礎測定を中心に実験を進めた。 弗酸処理して水素を終端したn型シリコンを陽極酸化し、厚さ数十から数百ナノメータの表面をポーラ化した試料を得た。この試料について、光起電力、ボルタモグラム、インピーダンス測定を行って水素発生に至る電気化学的過程を追跡した。 始めに、n型にするための不純物を燐として電子濃度は10^<13>〜10^<18>/ccにした。インピーダンス測定からシリコン表面と電解液との間に誘起される微分容量を調べたところ、試料のフェルミ準位から0.2eVのところに表面状態が存在することがわかった。この表面状態を経由して電気化学反応が進行すること、表面状態の数は不純物濃度、ポーラス表面の厚さに比例することもわかった。この結果から、表面状態は燐原子によるもので、水素と複合体を作ることで化学反応が進行すると解釈した。
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