X線暗視野法の開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15654042
• 研究機関: 高エネルギー加速器研究機構
• 研究代表者: 安藤 正海 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (30013501)
• 研究分担者: 兵藤 一行 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助手 (60201729) ; 杉山 弘 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助手 (80222058)
• キーワード: X線暗視野法 / X線光学 / 放射光 / 医学応用 / 2次元画像合成用アルゴリズム

研究概要

X線画像は物体中を通過するX線が受ける吸収変化、位相変化、進行方向変化(屈折原理)のいずれかまたは複数を画像原理として用いている。現在まではX線画像は圧倒的に吸収原理を用いている。本研究では、吸収原理では見えない物体について屈折原理を用いることにより視覚化することを狙って開発する。特に屈折原理に基づく画像に加えX線暗視野法を提出した。X線暗視野法は物体からの画像情報の中に極力物体を照明したX線を含まない手法の開発をいい、世界初のデータを世界に提供してきた。本年度の研究の中では(1)屈折原理にもとづく3次元画像用の世界に通用する認められたアルゴリズムは存在しない。そこに着目し、将来、暗視野法による2次元画像に対する要求が必ず出てくることを見通してX線暗視野画像用のアルゴリズムを開発する。(2)臨床応用を意識して現在の視野の大きさ25mm x 25mmを80mm x 80mmの大きさにまで高める。この2つを柱に今年度は開発を行なった。まず、(1)の課題設定についてはアルゴリズムの大要が昨年の夏に完成した。昨年12月にはPF放射光を用いた簡単なモデルによる実験を行なった。これによれば、従来型のFiltered Back Projection方式によっては決して得ることのできなかった非常に鮮明な3次元画像が得られた。現在は論文化を急いでいる。(2)の課題設定については昨年12月にSPring-8における実験で視野の拡大に成功した。これを用いて摘出人体標本である大腿骨上部の関節を臨床に近い条件で視覚化できるかを確認する試験を行なった。具体的にはヴィニール袋に水を入れ、それに上の関節を入れて撮影したところ、従来法である吸収コントラストでは不可視であったものが、軟骨が鮮明に見えることが確認できた。

研究成果

• [文献書誌] Masami Ando, Anton Maksimenko, Hiroshi Sugiyama, Wanwisa Pattanasiriwisawa, Kazuyuki Hyodo, Chikao Uyama: "A Simple X Ray Dark- and Bright- Field Imaging Using Achromatic Laue Optics"RIGAKU Journal. 20(2). 21-24 (2004)
• [文献書誌] Anton Maksimenko, Hiroshi Sugiyama, Wanwisa Pattanasiriwisawa, Kazuyuki Hyodo, Masami Ando: "A Test of an X-Ray Quatrochrome Interferometer for Simultaneous Observation of Images due to Dark- and Bright- Field, Phase-Interference and Absorption Contrasts"Jpn.J.Appl.Phys.. 42(9AB). L1096-L1099 (2004)
• [文献書誌] Masami Ando, Wolf-Rainer Dix, Kazuyuki Hyodo, Sadanori Ohtsuka, Tohoru Takeda, William Thomlinson, Jin Wu, Iwao Yamaguchi: "Current Human Intravenous Coronary Angiography in the World---Line-Scan Imaging and Real-Time Imaging"Proceedings of the Asian Synchrotron Radiation Seminar in Jordan. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] Masami Ando, Hiroshi Sugiyama: "Development of X-ray Novel Imaging--Approach to Visualization of Clinical Organs"Proceedings of the Asian Synchrotron Radiation Seminar in Jordan. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] Masami Ando, Hiroshi Sugiyama, Anton Maksimenko, Edward Rubenstein, Joseph Roberson, Daisuke Shimao, Eiko Hashimoto: "A Novel X-ray Dark-field Imaging-How Many Steps Are We Before Clinical Application?"Journal of Radition Phsics. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] Eiko Hashimoto, Hiroshi Sugiyama, Anton Maksimenko, Kazuyuki Hyodo, Tetsuya Yuasa, Wanwisa Pattanasiriwisawa, Edward Rubenstein, Joseph Roberson, Masami Ando: "A Novel and Simple X-Ray Dark-Field Imaging"Proceedings of the 8^<th> International Conference on Synchrotron Radiation Instrumentation. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] 安藤正海, 杉山 弘: "X線暗視野像の原理と応用-透過型角度分析板を中心に-"日本結晶学会誌. 45. 196-202 (2003)
• [文献書誌] 安藤 正海, 杉山 弘, 〓 鼎昌: "新しい医用画像方式の開発-X線暗視野像でどこまで見えるか-"Radioisotope誌. 53(2). 35-45 (2004)