研究概要 |
NiCoCrMo合金を用いて新たなピストンシリンダー型のミュオンスピン回転・緩和実験用(μSR)の圧力容器を作成した。圧力容器の内径は12mm,厚さは最小部分で7.65mmとした。耐えうる最大荷重は11tonであり,この荷重を加えたときの発生圧力はヘリウム温度において0.7GPaであった。この圧力は従来用いていたBeCuの圧力容器に比べ1.3倍高くなっている。標準試料としてNiを用いμSR測定を行ったところ,ミュオンの運動量が100MeV/cのとき60%のミュオンが試料に静止することがわかり,十分μSR実験が可能であることがわかった。1GPa程度の高圧発生を目指すには圧力容器のデザインを変更するか,容器の材質の再検討が必要である。作成した圧力容器を用いて重い電子系反強磁性体CeRh_2Si_2についてμSR実験を行ったところ,常圧で見られていた反強磁性転移に伴う回転成分・緩和成分が量子臨界点に近づくにつれ減少していく様子が観察された。以上の内容の一部について物性研短期研究会「高圧セミナー21・圧力誘起量子相転移」でポスター発表を行った。
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