研究概要 |
本研究により開発したミュオンスピン回転緩和実験(μSR)用の圧力容器を用いて,重い電子系反強磁性体CeRh_2Si_2とスピンギャップ系TlCuCl_3についてμSR実験を行った。CeRh_2Si_2は圧力印加による反強磁性転移温度の減少が観察され,その結果はこれまでの中性子回折実験などの結果と一致している。さらに本研究により明らかになった内部磁場の大きさはほとんど圧力依存を示さず,1GPa近傍の量子臨界点において1次相転移が起きていることを示唆している。しかしながら,圧力下中性子回折の実験では逆に2次転移的な振る舞いが示唆されており,さらなる研究が望まれる。他方,TlCuCl_3は圧力印加によりスピンギャップが消失し反強磁性状態へ転移することが示唆されているが,本研究により300G程度の静的な内部磁場の存在が明らかになり,反強磁性状態への転移が明確になった。以上のように本研究により開発したμSR用圧力容器はミュオンスピン回転信号が観測される場合は十分常圧の場合と同様な知見を与えうることが明らかになった。しかし,μSR実験の独壇場とも言える数マイクロ秒程度の緩和現象については十分な信号が得られてはおらず,今後の課題である。以上の結果の一部は本年夏に英国で開催される国際μSR会議で発表を行う予定である。
|