研究概要 |
(1)サケの精子のDNAの粉末を乾燥ヘリウムガス中に封入し,マイクロ波測定用の試料を用意した。このとき,生体試料は熱に弱いことを考慮し,室温でヘリウムガス中に封入する装置を,すべてに先立ち,開発した。 (2)この試料を10GHz空洞共振器中に入れて,10GHzでの複素応答を室温から液体窒素温度(77K)までで測定した。試料からの信号のみを任意性なくとりだすために,封入管中の試料の量を変化させた数種類の試料にたいして測定を行い,試料からの信号を抽出した。 (3)測定した試料の複素応答データを検討し,絶縁体にたいする解析方法を適用し,10GHzにおける電気伝導度と誘電率をもとめた。 (4)その結果,電気伝導度は,室温で,3x10^<-3>(ohmcm)^<-1>程度であり,温度とともに伝導度が減少する半導体的な振る舞いをすることがわかった。温度依存性から見積もった活性化エネルギーは50meV-70meVである。 (5)文献にある水分子の高周波伝導度との比較から,この値は,水分子のそれよりも一桁以上大きく,DNAに固有のものであると考えられる。 (6)同じく,文献に報告されている「100GHzでは水分子の電気伝導度しか測定されなかった」という事実も定量的に考え合わせると,DNAの電気伝導度の周波数依存性としては,ホッピングタイプの伝導が得られた。この候補としては,ヌクレオチドの一次元スタックの方向のホッピング伝導が考えられる。
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