研究概要 |
最近、環境問題をクリアできるDNA伝導素子や機能性材料の研究が注目されている。平成15,16年度に我々は電気伝導率およびプロトンNMRの測定から、相対湿度20%以上でDNA薄膜の伝導はプロトン伝導が支配的であることを示した。またプロトンだけでなく、ルビジウムイオンもDNA薄膜へドープ可能であり、ルビジウムをドープしたDNA薄膜は高導電性の薄膜となることも示してきた。さらにDNAのプロトン伝導性を利用し、DNA薄膜が燃料電池の電解質となることを初めて見出した。そこで平成17年度は、DNA薄膜へ他のアルカリ金属イオンをドーピングし、高導電性のDNA薄膜の作成を試み、これらの伝導機構を調べた。さらにDNAを基盤とした機能素子の作成も試みた。 DNAへのアルカリ金属のドーピングを行ったところ、ルビジウムだけでなく、セシウムイオンもDNA内にドーピング可能であり、電気伝導度が10倍以上増加することがわかった。さらにDNA内のイオン輸送において、DNA薄膜内に生じる分極成分が伝導性や燃料電池特性に密接に関係することがわかった。またDNAの燐酸基にNaイオンが結合したDNA-Naにおいても薄膜化が可能であり、その電気伝導度はDNA薄膜と同様に相対湿度に強く依存することも明らかにした。さらにDNA-Naの電気伝導度はDNA薄膜の電気伝導度と比べて同じ条件下では2倍以上高くなることがわかった。このDNA-Naにおける高い伝導性の原因をNMR測定から調べたところ、DNA-Na薄膜内のプロトンはDNA薄膜内のプロトンに比べ、活性化しており、Naイオンの存在がプロトンの運動を活性化に寄与している可能性を初めて示唆した。これらの結果に加え、DNA導電性薄膜を基板とした電界効果トランジスタ(FET)を作成し、これがNormally onタイプのp-type FETとなることも初めて見出した。
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