研究計画初年度にあたる平成15年度は、主に実験装置の製作と調整、及び予備実験に充てた。 ガラスおよびプラスチック製の各種容器と、それらの中に粉体試料を入れた上で、最大100N程度の力を上下方向に加えることのできる装置を新たに製作した。試料としては、粒子径100マイクロメータ〜500マイクロメータのステンレス製の球状粒子を用意し、以下の測定を行なった。 ・ステンレス球は導電性が高いものの、表面に形成される不動態の影響で一般に接触抵抗が大きく、導通するにはある程度以上の接点応力が必要となる。そのため、粉体内部の応力分布と導電性は密に関係していると予想される。そこで、各種形状の容器について、印加する圧力と電気伝導度(直流、交流)の関係を測定した。 接点の状態を反映して、通電中はショットノイズ様の雑音が観測され、伝導度や交流インピーダンスも時間的に大きく揺らぎ、印加する圧力の履歴によっても大きく変化する。そうした中から粉体ネットワーク構造の変化に由来した情報を取り出すことは次年度への課題である。 ・一方、ステンレス表面が濡れた状態で同様の実験を行なうと、水の誘電特性を反映して、圧密した導電性粉体の電気伝導は容量的となる。フーリエ解析によるインピーダンス測定装置を製作し精密なインピーダンス測定を行なったところ、水分子の異常緩和のタイムスケールに較べてはるかに低い周波数領域(KHz〜MHz)で、アドミタンスが周波数の非整数べきで変化すること、べき指数は粉体に加える圧力によって変化することを見出した。この周波数応答は紛体内部の三次元構造を直接反映した結果と期待される。
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