1.実験装置の製作と改良 前年度に引き続き、粉体が凝集した系の三次元ネットワーク構造が、マクロな輸送現象に及ぼす影響を調べるため、ステンレス球の圧縮装置とインピーダンス測定装置の改良と調整を行なった。粉体のように摩擦が重要な系では、系の履歴性が強いこともあって、再現性の高い実験が困難であること、インピーダンス測定が周囲の誘導やノイズに敏感である点などを考慮し、粉体加圧部や測定回路の再検討を行なっており、また、試料となる単分散性の優れたステンレスビーズを新たに購入し、より安定してデータを得られる方法を探っている。 2.粉体と流体が相互作用する系のモデリング 圧縮された粉体系の力学的な特性の中でも、応用上特に重要と思われるのは、流体を含むような系の動である。こうした系では、地震の際の液状化現象に見られるように、摂動によって内部の圧力ネットワーク構造が劇的に変化することが知られているが、理論的な理解や満足できる数理モデル化は今なお達成されていない。本研究では、粉体と流体の挙動を構成方程式レベルから記述するために、SPHと呼ばれる方法を応用した流体・固体(粉体粒子)混合系シミュレーションシステムの開発を進めている。SPH法は、流体粒子を用いてNavier-Stokes方程式をラグランジェ描像で解く方法の一つで、自由表面や複雑な境界条件を比較的簡単にモデル化することができる。その例題として、運動する物体と流体表面の「衝突」の解析を行い、実験結果をよく再現する結果を得、さらにモデル理論を提案した(発表論文)。 次年度は、流体中に粉体が分散するような系の数理モデルとその三次元シミュレーションコードを開発し、流体中の粉体のパッキング過程とその構造、外力による構造変化の解析を行なう計画である。さらに、1の実験系でも同様の「液状化」実験を試み、モデルとの比較を行なう予定である。
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