研究概要 |
2つの光子が同時に放出される光子対と呼ばれる状態は2光子干渉や偏光の量子相関をはじめとする多くの量子光学の実験に利用されている.また量子通信や量子計算といった新しい情報処理への応用も期待されている. 現在までのところ,光子対の生成には自発パラメトリック下方変換が利用されており,ポンプ光を形成する光子を半分の周波数をもつ2つの光子に変換することで実現されている. これに対して,われわれは,偏光選択性のある2光子吸収を利用して,コヒーレント光からそれと同じ周波数をもつ光子対を作り出す方法を考案した. 本研究はこの提案にもとづく実験を行い,光子対の性質を研究することを目的としている. 本年度は上記の実験に必要とされる,光子検出器の開発とその量子効率の測定を行った. 光検出器にはアバランシェフォトダイオード(APD)を利用した. APDで単一光子を検出するには,過剰バイアス状態で動作させる必要があり,光子検出後に雪崩電流を止めるためのクエンチ回路を設けなければならない.ここでは高速動作の汎用CMOS論理回路を用いたクエンチ回路を新たに考案し,試作と特性評価を行った. その結果,上記の光子対生成の実験に十分利用できる性能をもつ,光子検出器を開発することができた. とくに,汎用の論理ICだけで,全固体単一光子検出器が実現できたことは有意義であり,将来,カスタムIC化することで,高感度光検出器アレイなどにも応用が広がるものと期待される.
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