研究概要 |
本年度(平成16年度)は,我々の考案した偏光選択性二光子吸収による光子対の生成法にもとづき,その実験的検証を行なった.従来のパラメトリック下方変換を用いた方法では,入射するレーザ光の半分の周波数の光子対が生成されるのに対して,二光子吸収を利用した我々の方法では,入射したレーザ光と同じ周波数の光子の対が生成されるという特徴がある. 原子のS-S間二光子遷移には偏光選択性があることが知られているので,我々はルビジウムの5S-7S間二光子遷移を利用することにした.理論的な考察により,縮退二光子遷移では二光子吸収確率が著しく小さいために光子対が検出不可能であると判断し,波長の違う2種類のレーザ光を用いることで仮想準位と実中間準位との差(離調)を小さくして,吸収確率を大きくすることにした.非縮退の二光子吸収であることと,離調が小さくなることから,選択則も慎重に見直す必要があったが,離調が中間状態の超微細構造より大きければ必要とされる選択則が成り立つことを確認した. 以上の考察から実験には,780nmの波長と740nmの波長の光源が必要となる.780nmの光源には外部共振器型半導体レーザを利用し,740nmの光源にはチタンサファイアレーザを利用することにした.780nmの光と740nmの光を対向方向から入射し,それらの波長をルビジウムの5S-7S間二光子遷移に同調させることにより,励起準位からの緩和光をドップラーフリーの信号として観測することに成功した.また,偏光選択性を確認するために,両レーザの偏光を同円偏光と逆円偏光とし,励起速度を測定したところ,同円偏光にしたときの方が励起速度が大きいことが分かり,偏光選択則が成り立っていることが分かった.
|