研究概要 |
平成15年度の研究において,我々はTHz領域での飽和分光・ホールバーニング分光を行うためのシステム構築及び,THz領域における生体関連物質の吸収スペクトルの測定を行った.その概要を下記に示す. THz領域には,水の吸収が存在することがよく知られている.しかし,生体関連物質には多数の水分子が含まれていること,またその溶媒が水であることから,水の影響を少なくするために反射型のTHz分光光学系の構築を行った.THz波の信号発生及び検出には,フェムト秒mode-lock Ti : sapphireレーザー(〜100fs,800mW,80MHz)をダイポール型の光伝導アンテナに集光し,駆動させることによって行った.また,生体関連物質の光学系への取り込みを容易にするために,試料部分は倒立型の分光系とした.測定系の評価をするために,代表的な蛋白質試料であるリゾチームや,BSA,パパインにおいてTHz反射分光測定を行った.その結果,どの試料においても1THz以下の低振動数領域においてブロードな吸収が存在することが分かった.この領域のバンドは,蛋白質やアミノ酸の実際のダイナミクスを反映しており,生体分子の機能を深く関わっていると考えられているが,その特性は未だに明らかになっていない.今後は,光によってその機能が制御されうる光受容蛋白質へ上記のシステムを応用し,1THz以下の低振動数領域での蛋白質のダイナミクスを明らかにすること,その結果をふまえて、高強度THzを用いた吸収飽和分光・ホールバーニング分光を行う.
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