研究概要 |
1.分析機器の整備 海洋コア総合研究センターの移転に伴って2003年4月に新たな施設が完成したことから,15年度前半は,施設内に設けられた有機地球化学実験室の整備および設置機器の立ち上げ作業を順次行った.本研究に利用する主要機器であるガスクロマトグラフ燃焼質量分析計(GC/C/MS)の整備も行い,予備的な分析・測定を実施し,実試料の分析が実行可能であることを確認した. 2.堆積学的検討 すでに採取し冷蔵保管していた南大洋太平洋セクター(タスマニア島〜南極大陸)から緯度トランセクトで採取された表層堆積物(白鳳丸KH94-4およびKH01-3次航海におけるマルチプルコア試料計13地点)を用いて,堆積学的な検討を行った.X線CTスキャナによるX線透過画像解析によると,海氷分布を復元する指標の一つである漂流岩屑(IRD)が明瞭に存在する場所は,南緯60度付近から南極大陸までであり,それより以北の堆積物中にはほとんどIRDが存在しないことが明らかとなった.この結果は,非破壊測定の一つである堆積物の帯磁率の緯度分布からも支持されており,南極大陸近傍の堆積物ほど帯磁率が高く,南緯60度以北は極めて低く,かつ,一定の値を示している.このことは,南極大陸に近いほど大陸起源の磁性鉱物が多量に供給されていることを意味している.従って,海氷(氷山由来)の分布北限はおよそ南緯60度付近と見積もることができ,また,南極大陸に近いほど海氷の影響が大きいことがわかった. 3.情報収集 国内外での学会等に参加して,バイオマーカー水素同位体比の測定技術および最新の研究成果について,情報収集を行った.特に,植物プランクトン由来バイオマーカー(例えば,珪藻由来のC28ステロール,渦鞭毛藻由来のダイノステロールなど)が水素同位体比の測定に適していることがわかり,次年度以降の研究方針の設定に役立つ情報となった.
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