研究概要 |
今年度は、微粒子がプラズマ中で負帯電して閉じ込められる効果を利用して、DCプラズマを用いたプラズマCVD法による気相中での単層カーボンナノチューブの生成率向上について検討を行った。 反応装置内に、気化したフェロセン[Fe(C_5H_5)_2]と水素希釈エチレンを、約2000□に加熱したフィラメントの方向に吹き付け、フィラメントを接地電位とし、下流側に捕集板を兼ねた陰極版を置いてプラズマを発生させた。そして、約30分間気相中で成長した微粒子を陰極およびプラズマ下部に置いた捕集板上で収集し、重量測定、ラマン分光測定および透過電子廟微鏡観察を行った。その結果、下部の捕集板上に、熱フィラメントのみの場合は微粒子が殆ど捕集されなかったのに対してプラズマを用いた場合は多いことがわかった。これは、プラズマ中で捕捉され大きく成長した微粒子が重さで下に落下することにより堆積したものと考えられる。したがって、本方法の有効性が実証された。また、捕集されたカーボン微粒子のラマン分光測定の結果、低波数域スペクトルでは、151cm^<-1>,164cm^<-1>,183cm^<-1>にピークが見られ、単層カーボンナノチューブによるラジアルブリージングモードと判断された。透過電子顕微鏡観察からも直径2nm前後のチューブ状物質の成長が確認された。 さらに、カーボンナノチュープ成長過程における気相生成物の四重極質量分析を行い、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンの分子や、フェロセンの分解による生成物も確認された。
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