研究概要 |
本研究では宇宙空間における電子観測データの谷間となっている10〜100keVのエネルギー領域の新型電子センサーとしてのAPDの開発を目的としてきた.電子検出用APDの開発にはいくつかの研究課題があるが,本年度はまず(株)浜松ホトニクス製のAPD素子(Z7966-20)を用いて,温度環境に対する素子の応答を較正する実験を行った.このAPD素子は40Kの温度変化に対しておよそ2倍の出力を示した.宇宙空間で使用する場合には温度制御を行うのが理想であるが,印加電圧の制御でも温度変化を補償することも可能である.この結果を2003年11月に行われた地球電磁気・地球惑星圏学会第114回講演会で発表した.また,較正実験のひとつとして,APDと従来の電子検出素子であるCEMの検出効率の比較実験を行うため、真空チャンバーおよび周辺設備環境を整え,現在試運転中である.さらに3-50keVのオーロラ電子をターゲットとして,JAXA宇宙科学研究本部の観測ロケットS-310-35号機にAPDを用いた新しい電子計測器を搭載予定である.ロケットは2004年12月にノルウェーのアンドーヤロケット試験場より打ち上げられる予定であるが,現段階で計測器の設計はほぼ終了している.このロケット実験での電子観測は,飛翔体を用いたAPDの電子観測として初めての技術試験の意義だけでなく,従来の観測より高エネルギーのオーロラ降下電子の観測は新しい知見をもたらすものと期待される.このロケット搭載の観測機概要と予想される地球物理的成果については,地球電磁気・地球惑星圏学会第114回講演会で発表した.今後はロケット搭載の機器製作,較正実験,打ち上げ環境試験,等を行って打ち上げに備える.
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