当初の計画では、キャピラリー電気泳動で使用されるキャピラリーの中に、細胞を刺激応答後の時系列に添って並べることを予定していたが、最近、マイクロチップ上に細い溝を掘り、その中をDNAやタンパク質を泳動させるマイクロチップ電気泳動法が実用化された。本研究では、最新のマイクロチップ技術を取り入れ、マイクロチップ上で細胞に刺激を与えて活性化し、さらに、そのまま、マイクロチップ上の溝の中を、刺激応答の時系列に添って細胞を一列に並べる方法を開発することを目的とする。本年度は、細胞を流すための溝のサイズを理論的に検討し、また、これまでに報告されている実験結果を参考に、マイクロチップの設計と製作を行なうことに主眼をおいた。検討の結果、本研究の目的に最適な溝のサイズは、幅50μm、深さ15μmであるとの結論に達した。上記サイズを有する溝を3本、およびこれらの溝に合流する溝を1および2本を十字型に配置したマイクロチップを設計し、マイクロチップの受託製作専門企業に製作を委託した。一方、顕微ラマン分光法を用いて観察する細胞として、赤血球を血液から分離精製した。赤血球にブチルハイドロパーオキサイドを加えて、赤血球内のヘモグロビンが、酸素運搬機能を喪失したメトミオグロビンに変わる過程を、新らたに購入した分光光度計を用いて確認した。今後、マイクロチップ内で上記反応を生起させ、顕微鏡下で観察するとともに、顕微ラマンスペクトルを測定することによって、ヘモグロビンの変性過程の動的な追跡を行なう予定である。
|