研究概要 |
高強度なパルスレーザーを固体シリコン(Si)に集光しレーザーアブレーションを誘起すると,可視領域で発光するクラスターが生成する。これらSiクラスターの電子状態は,そのクラスター構造に顕著に依存するが、それぞれのクラスターを選択的に創製する手法が確立されていない。本研究の目的は,反応場に超臨界流体,手法にレーザーアブレーションを用い,発光色が異なるSiクラスターを選択的かつ高効率に創製する新たな手法を確立することである。そこでまず装置開発から行った。 装置は,高圧サンプルセル,ファイバー光学系,吸光光度計,ナノ秒YAGレーザーから構成される。サンプルセルは旋盤加工により自作した。吸光光度計の光学系には光ファイバーが用い、入射光・検出光を任意の方向に取り出すことができるようになり,また迷光が少なくなった。現在での有効波長領域は400-1200nmであり,吸光度は5X10^<-3>付近まで観測可能である。 Siは純度99.9999%のバルク単結晶を用いた。超臨界流体には純度99.99%のCO_2を用いた。吸収スペクトル測定はin situで行った。すなわち,アブレーション前の超臨界CO_2の透過スペクトル(I_o),アブレーション後の透過スペクトル(I)をそれぞれの圧力で測定し,差スペクトルからレーザー照射による変化のみを検出した。 アブレーションを行った全ての圧力において,スペクトルが観測され、スペクトル形状はアブレーションを行った時の流体密度により著しく異なった。また、動的光散乱測定から生成した微粒子の大きさを測定したところ、5-100nmのサイズであった。このサイズはアブレーションを行った際の流体の密度により変化した。以上のことから,超臨界CO_2中でSiのレーザーアブレーションを行うとナノ粒子が生成し,超臨界流体の密度により異なる電子状態・異なるサイズをもつナノ粒子を選択的に創製できることが見出された。
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